医師免許の試験を取ると、2年間は研修医になります。学生のときは大学で勉強しても、手術や注射の経験はさせてもらえないので研修医になってはじめて注射したりするのです。
先輩医師に教わりながらはじめて静脈注射をしたときは感激したのを覚えております。それが上手にできるようになると、病棟の患者さんに朝の点滴に回ります。血管の出にくい人には大変苦労します。女性部屋は特に苦労しました。一度刺すのに失敗したりすると「下手な先生」のレッテルを貼られてしまいます。そうなると 点滴に回っても、「あの先生はイヤ」なんて看護師さんに告げ口されてしまうのです。
そういったことを乗り越えていくと、次は手術の助手です。大きな手術や小さな手術のお手伝いをさせてもらうのです。それが上手にできるようになると、やっと手術をさせてもらいます。手術部屋には今日の手術の予定表が貼ってあります。私のはじめての手術は「アテローム」でした。手術時間は30分の簡単な手術とはいえ、さまざまな科の教授に並んで、手術の予定表の術者のところに自分の名前をみつけたときジーンとしました。なんかチョッピリだけ社会に貢献している人間になれた気分でした。
そんなことを2年間やって生きていくのです。問題は給料が月に2万円ということです。確かに何もできないのですが、同時に入った若い看護師は初任給が17万円です。看護師さんと このことについて話すと、
「先生たちは将来たくさんもらえるでしょ」
そういう問題ではありません!研修医がはじまるころのある日、父が「これ持ってけ」。と封筒を渡してくれました。なんと100万円です。「おまえらは、当分安月給なんだから、これで食いつなげ」「うん、ありがとう(涙)」。私にはこのお金があったので、少しずつ使って食いつなぎました。、そして、お金がなくなってきた10月頃に、やっと当直のバイトを割り当てられたのです。
一晩3万円の当直です。何か問題が起きたら大変なので 山ほどの本を抱えて病院に行ったものです。手帳にも 先輩から聞いたさまざまなマニュアルを書き込み、眠れない夜を過ごしたのを覚えてます。お金を頂くことの大切さを知り、当直代として頂いた3万円は大切に使いました。
