私は大腸過敏症です。ですから、食事を取ると20分以内に便意を感じてしまいます。
消化器外科で外来をしていたときに、こういった患者さんによく出会いました。私を含めて大腸過敏症の方は 通勤途中のどこにトイレがあるかを把握しながら生活してますし、食事内容にも注意しています。ですから私が朝食をとる場合は、食後に20分以上の時間があるときだけです。そうしないと、通勤の途中でトイレに行かなければならないからです。
その日は朝食を摂らずに出勤しました。病院に着くと、一日の予定を検討しながらアイスコーヒーで一服します。その日は胃癌の手術でしたから、4時間くらいかかる予定でした。手術中に抜けるわけにはいきませんから、そんなときは朝食をしっかりと摂って、手術にのぞみます。トーストにサラダ、アイスコーヒーを飲んで、予定通り便意を感じたのでトイレに行きました。私は、職業柄、便を観察する癖があります。血液の混入や太さ、未消化の状態を確認するのです。その日は、前日に酒を飲まなかったので、色合いの良く香り豊かな便を大量に排出しました(飲酒の翌日は下痢しやすいのです)。観察後、健康具合に大満足して水を流そうとすると、
「あれ!水がでない!!!!!!さらにトイレットペーパーがない!!!」
そのとき脳裏に浮かんだのは、「先週は確か、このトイレは工事中だったぞ。けど、ドアは空いてたから工事は終わったのではなかったのか??」
トイレットペーパーもないのでオシリも拭いてません。ズボンをはくこともできず、半端な状態でおそるおそるトイレの入り口を見ると、
「ガーン!!!工事中だああああ!!!!」
私は悩みました。手術の時間は迫っています。だからといってこのままでは逃げられません。悩んだ結果、他のトイレに行って、オシリを拭き、きちんとズボンをはいて、トイレットペーパーを握り締め、工事中のトイレにもどってきました。そのトイレットペーパーを排出物の上に置いて隠し、便器の奥におしこみました。それと「ごめんなさい」のメモを残して出ていきました。
手術前に先輩が「志賀、顔色悪いけどどうかしたのか?」
さすが医者です。見抜かれました。「いや、昨晩飲みすぎたんですかねえ。いたって元気ですよ。」
手術は問題なく成功しました。手術後、恐る恐るトイレの入り口を見てみると、ドアに「使用厳禁」と大きな紙で張り紙がしてあり、太いガムテープでドアは閉鎖されてました。まるでトイレ内で殺人事件でもあったような雰囲気でした。
心の中で「犯人はわたしです。ごめんなさい(合掌)。」と思いながらその前を通りすぎました。
